東京地方裁判所 昭和42年(行ク)30号 決定 1967年9月23日
申立人 中央労働委員会
被申立人 キユーピー株式会社
主文
被申立人は、被申立人申立人間の昭和四二年(行ウ)第五号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決確定に至るまで、被申立人とキユーピー労働組合外四名との間の中労委昭和三九年(不再)第一二号及び第一三号事件につき昭和四一年一一月二六日申立人がなした命令の主文第一項、並びに右命令により再審査の申立が棄却されたキユーピー労働組合外五名申立にかかる都労委昭和三七年不第六四号事件外二件につき昭和三九年三月二五日東京都地方労働委員会がなした命令の主文第二ないし第五項の各命令に、左の範囲において従うべきことを命ずる。
「一、キユーピー労働組合の組合員根岸和男、同萩原春男、同若林日出男につき、
(1) 同人らを昭和三八年二月九日解雇当時の原職又は原職相当職に復帰させること。
(2) 同人らに対し、昭和三八年二月一日から右復職までの間の諸給与相当額として、昭和四二年八月三一日までの分については別紙(一)記載の金員を、また同年九月一日以降の分についてはこれに準ずる金員を毎月二五日限り、支払うこと。
二、キユーピー労働組合の組合員根岸和男、同萩原春男に対し、昭和三七年九月七日付減給処分によつて失つた給与差額として別紙(二)記載の金員を支払うこと。
三、キユーピー労働組合員若林日出男、同斉藤幸也に対し、昭和三七年一〇月八日付出勤停止処分によつて失つた給与差額として別紙(三)記載の金員を支払うこと。」
(裁判官 今村三郎)
(別紙省略)
〔参考資料〕
命令書
(中労委昭和三九年(不再)第一二号・昭和三九年(不再)第一三号 昭和四一年一一月二六日 命令)
一二号事件申立人 キユーピー株式会社
一二号事件被申立人 キユーピー労働組合外三名
一三号事件被申立人 中島薫一郎
一三号事件申立人 影山政光外一名
主文
一、初審命令主文第七項を取り消し、同第一項を次のとおり変更する。
キユーピー株式会社は、キユーピー労働組合の組合員影山政光、同染谷誠一、同根岸和男、同萩原春男、同若林日出男および斉藤文清に対し、次の措置を含め、同人らが解雇された日以降解雇されなかつたと同様の状態を回復させなければならない。
(1) 原職又は原職相当職に復帰せしめること。
(2) 解雇から復職までの間に同人らが受けるはずであつた諸給与相当額を同人らに支払うこと。
二、各再審査申立人のその余の申立てを棄却する。
命令書
(東京地労委昭和三七年(不)第六四号・昭和三七年(不)第七六号 昭和三九年三月二五日命令)
申立人 キユーピー労働組合外五名
被申立人 キユーピー株式会社
主文
一、被申立人は、申立人組合組合員影山政光、同染谷誠一、同根岸和男、同萩原春男、同若林日出男および同石橋靖庸を原職に復帰させ、同人らが解雇された日から原職に復帰するまでの間にそれぞれ受けるはずであつた賃金相当額を支給しなければならない。
二、被申立人は、申立人組合組合員根岸和男および萩原春男に対してなした昭和三十七年九月七日付減給処分を撤回し、これによつて同人らが失つた賃金相当額を支払わなければならない。
三、被申立人は、申立人組合組合員若林日出男、同斉藤幸也に対してなした昭和三十七年十月八日付出勤停止処分を撤回し、出勤停止期間中同人らが受けるはずであつた賃金相当額を支払わなければならない。
四、被申立人は、申立人組合組合員を解雇減給、出勤停止などの処分に付すること親元送金手当を組合員以外の従業員だけ支給すること、または、会社職制を通じて申立人組合からの脱退をすすめることなどの方法により申立人組合の運営に支配介入してはならない。
五、被申立人は、縦七〇センチメートル、横一メートルの木板につぎの文書をかい書で墨書し、被申立人の本社の従業員の見易い場所に十日間掲示しなければならない。
記
昭和 年 月 日
キユーピー労働組合
執行委員長 影山政光殿
キユーピー株式会社
代表取締役 中島董一郎
会社が、貴組合員を不当に解雇、減給、出勤停止などの処分に付したこと、親元送金手当を組合員以外の従業員にだけ支給したこと、または会社職制を通じて組合からの脱退をすすめたことは貴組合の弱体化を意図した不当労働行為であるので、今後このような行為を一切いたしません。
ここに東京都地方労働委員会の命令により掲示いたします。
(注、年月日は掲示した日を記載すること)
六、被申立人は、第一項、第二項、第三項および第五項の命令を、この命令書受領の日から五日以内に履行し、かつ履行の内容を文書をもつてすみやかに当委員会に報告しなければならない。
七、申立人のその余の申立は棄却する。
緊急命令申立事件
申立の趣旨
右当事者間の御庁昭和四二年(行ウ)第五号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決が確定するまで、申立人が昭和四一年一二月二二日、被申立人に交付した中労委昭和三九年(不再)第一二号・第一三号事件命令中、キユーピー労働組合の組合員影山政光、同染谷誠一および同斉藤文清に関する部分および陳謝文掲示を命じた部分をのぞき、
一、被申立人は、キユーピー労働組合の組合員根岸和男、同萩原春男、同若林日出男に対し、次の措置を含め、同人らが解雇された日以降解雇されなかつたと同様の状態を回復させなければならない。(1)原職又は原職相当職に復帰せしめること。(2)解雇から復職までの間に同人らが受けるはずであつた諸給与相当額を同人らに支払うこと。
二、被申立人は、キユーピー労働組合の組合員根岸和男および同萩原春男に対してなした昭和三七年九月七日付減給処分を撤回し、これによつて同人らが失つた賃金相当額を支払わなければならない。
三、被申立人は、キユーピー労働組合の組合員若林日出男、同斎藤幸也に対してなした昭和三七年一〇月八日付出勤停止処分を撤回し、出勤停止期間中同人らが受けるはずであつた賃金相当額を支払わなければならない。
四、被申立人は、キユーピー労働組合の組合員を解雇、減給、出勤停止などの処分に付すること、親元送金手当を組合員以外の従業員にだけ支給すること、または、会社職制を通じてキユーピー労働組合の運営に支配介入してはならない。
との決定を求める。
申立の理由
一、<1> 申立外根岸和男は、昭和三三年一一月六日、被申立人に雇用され仙川工場に勤務していたが、昭和三七年九月七日、平均賃金一日分の半額を減給する懲戒処分に付され、昭和三八年二月九日諭旨解雇された。
<2> 申立外萩原春男は、昭和三三年二月一〇日、被申立人に雇用され、仙川工場に勤務していたが、昭和三七年九月七日、平均賃金一日分の半額を減給する懲戒処分に付され、昭和三八年二月九日諭旨解雇された。
<3> 申立外若林日出男は、昭和三二年二月四日被申立人に雇用され、昭和三七年一〇月八日、五日間の出勤停止処分に付され、昭和三八年二月九日諭旨解雇された。
<4> 申立外斎藤幸也は、昭和三三年一一月六日被申立人に雇用され、昭和三七年一〇月八日、五日間の出勤停止処分に付された。
(なお申立外斎藤幸也は本件再審査申立後、昭和四〇年八月一一日解雇された。)
二、これに対し(1) 申立外キユーピー労働組合(以下「組合」という。)は、昭和三七年一〇月一五日<1>申立外影山、同染谷の解雇取消、原職復帰、バツクペイ<2>申立外若林日出男、同斎藤幸也他一名の出勤停止処分の撤回およびその間の賃金相当額支給<3>組合運営に対する支配介入禁止の陳謝文交付と掲示を求めて東京都地方労働委員会に不当労働行為救済申立てを行なつた。((申立外組合は、準備書面(第一)(昭和三七年一一月二九日付)において右救済申立てについて、<1>申立外根岸和男、同萩原春男他一名の減給処分撤回および同人らの失つた賃金相当額支給を求める旨訂正補足))
(2) 申立外組合および同根岸和男、同萩原春男、同若林日出男ほか三名は昭和三八年二月二七日、根岸、萩原、若林ほか三名の解雇取消し、原職復帰、その間の賃金相当額支給、および右同人らに対する解雇、親元送金手当の差別支給禁止、会社職制を通じての組合脱退慫慂禁示等を内容とする陳謝文の交付および掲示を求めて東京都地方労働委員会に不当労働行為救済申立てを行なつた。
三、東京都地方労働委員会は、前記(1)・(2)申立事件および申立外組合、同斎藤文清申立てに係る事件(昭和三七年八月三〇日申立)と併合審査の結果、昭和三九年三月二五日付で別紙疎甲第二号証「主文」記載のとおりの一部救済命令を発し、右命令は同年四月九日被申立人に交付された。
四、右一部救済命令を不服として被申立人は、昭和三九年四月一六日、申立外組合・同斎藤文清は昭和三九年四月二二日、それぞれ申立人委員会に再審査の申立てを行なつたが、申立人委員会は右申立てを併合審査の結果昭和四一年一一月二六日付で別紙疎甲第一号証「主文」に記載のとおりの命令を発し、右命令は同年一二月二二日被申立人に交付された。
五、右命令に対し、被申立人は昭和四二年一月七日付をもつて申立外影山政光、同染谷誠一、同斎藤文清について諭旨解雇取消し、別命ある迄自宅待機を命ずる、解雇後同日に至る迄の間の給与並に賞与当相額を支給する旨を通知し、さらに同年一月九日付をもつて右三名に対してラツピングマシーン・ヒータースイツチ切断事件を理由に諭旨解雇する旨を通知したが、右三名に対する申立人委員会の命令は同年一月二一日確定した。
六、昭和四二年一月二〇日被申立人は、申立人委員会が交付した命令のうち右申立外影山政光、同染谷誠一、同斎藤文清に関する部分をのぞき、取消しを求める旨の行政訴訟を提起し、右事件は御庁昭和四二年(行ウ)第五号事件として目下係属中である。
七、昭和四二年二月二四日申立人委員会は、一方に申立外影山政光ら三名の再解雇の事実が発生し、一方に行政訴訟が係属するような事態は、本件労使関係の安定のため好ましいことではないと考え、被申立人および申立外組合に対して、本件全体の円満な解決について検討されたいこと、必要があれば双方の話し合いについて仲介の労をとることを申し入れた。
八、右申入れについて、同年四月二二日被申立人及び申立外組合は次の事項を了解するに至つた。
1 労使双方、中労委命令の趣旨に即して解決を図る。
2 解決のための諸条件については、労使各三名の交渉委員により協議することとし、この期間は三ケ月程度とする。
3 前記の協議の場所は中央労働委員会とする。
右の結果、同年五月九日から六月二二日に至る間四回にわたり当委員会において事務局職員立会いの下に、労使間の自主交渉が行なわれた。
ところが被申立人は、当初の了解事項に反し、影山ら三名の自発退職をあくまで固執したため、遂に六月二二日自主交渉は決裂するに至つた。
九、被申立人は、申立人委員会の命令を未だに履行しておらず、別紙疎甲第三号証乃至第五号証のごとく申立外根岸和男ほか三名は、収入の道もなく、きわめて不安定な生活を強いられており、もし、本件訴訟の解決するまで、申立人委員会の発した前記命令の内容が実現されないならば救済をうけた申立外根岸ら四名の生活は甚しく窮乏し、回復することのできない精神的、物質的損害をうけるのみならず組合組織も壊滅寸前の状態におかれていることは明らかである。
また被申立人は前記別紙疎甲第三号証乃至第五号証のごとく申立外組合の組合員を解雇、減給、出勤停止などの処分に付し、親元送金手当を組合員以外の従業員にだけ支給し、または、会社職制を通じて申立外組合からの脱退をすすめる等の現状においては、労働組合組織上回復すべからざる団結権の侵害をうける惧れのあることは明らかである。
以上の諸事情が、現状のまま黙過されるならばひいては労働組合法上の立法精神も没却されることになるので、申立人委員会は、昭和四二年七月五日第五三九回公益委員会議において、労働組合法第二七条第七項の規定に基づき本件緊急命令申立てを決議し、(疎甲第六号証)本申立に及んだ次第である。